今回はがんの最大の特徴である再発について書きたい。
これは謎の多い領域だけに、ワタクシの妄想が多分に含まれる。
がんには「がん幹細胞」なるものがあるという。これは学会で正式に認知された情報なのか分からない。
だが、理屈的には「がん幹細胞」がないと再発のメカニズムが分からない。
なぜかというと、例えばオプジーボ。
免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる有名な薬だが、これはがん細胞が免疫細胞のスイッチを切ることを邪魔する薬だ。
みんなに効くわけではないが、効いた人ではがんが劇的に縮小し、見た目にいなくなるケースも多い。
また、抗がん剤がよく効くタイプのがんもある。そういうがんでは抗がん剤療法でがんが見えなくなるケースが多い。
しかしいずれも、再発してしまうことが多い。(がんの種類による)
つまり、一方的に壊滅させられるがん細胞の中に、生き残る特殊なヤツがいると考えないとおかしい。
それが「がん幹細胞」ではないか。
薬物は、基本的にがんの特徴を捉えてやっつけるようになっている。
抗がん剤の多くは、細胞分裂が速いものを攻撃するようになっている。それは免疫細胞でも同じだ。
だから、髪の毛とか血液の細胞とか、分裂の速い奴らが巻き添えを食う。
すると、分裂が速くないがん細胞には効かないことになる。
「がん幹細胞」はそのような特徴があると言われる。
これはがんが再発するリズムともあう。再発は徐々に増えていくのではなく、ある時期までは鳴りを潜めているのだが、突然増殖を始める。
つまり、がん幹細胞はゆっくり増殖する。その中に、たまに増殖の速い細胞が出現し、それが一気に増殖して「がん」になるのではないか。
そして、この「がん幹細胞」に対する治療は今のところ標準治療にはない。
慶応大学の研究で、スルファサラジンが効くのではないかとされている。リウマチや潰瘍性大腸炎の薬だ。後者は阿部元首相の持病だな。要するに免疫疾患の薬だ。
さらには、「がん幹細胞」を免疫細胞に攻撃させるような免疫療法も動物実験で効果を挙げている。
再発に関しては、これが本命だと思っているが、再発に限らず、がんの進行や薬剤の効き目に影響する物質も発見されている。
それはIL-34。
ILとはインターロイキンのことで、免疫細胞間の情報やりとりに使われる物質だ。コロナで重症化の起因と言われた「サイトカインストーム」のサイトカインはインターロイキンやインターフェロンなどの総称だ。
どうやら、IL-34というのは免疫を抑制する効果があるらしい。免疫チェックポイント阻害剤の機序と同じだね。免疫のスイッチを直接的に切るのか、インターロイキンを通じて抑制するのかの違いだけ。
そういう能力をがんが獲得していくということだ。
悩ましいのは、仮にこれらの研究が進んで治療に使える目処が立っても、標準治療にこれらが組み入れられるまでには時間がかかることだ。
だが幸いなことに、スルファサラジンはドラッグリポジショニングにより発見された薬なので、オプジーボのようにべらぼうな値段にはならないと思われる。
抗IL-34もそれほど難易度が高いとは思えないので、自費治療でも手が届くものになるのでは。